1.コロナ禍でも旅行!私たちの出した結論
「どこかへ行きたい」「とにかく外出したい」――コロナ禍の状況であり、リモートワークも半年以上続いている。そして所属している異業種交流会の活動も、かれこれ1年近く休止している。
コロナになる以前は、「春はお花見」「夏はバーベキュー」「秋は1泊旅行」「冬はスキースノボ」と活動が盛んであった。私はこの異業種交流会で妻と出会い、その恩もあって現在は代表幹事として四季の活動を取り仕切っている。
このままでは、この交流会も終わってしまう。オンライン飲み会ももう飽きた。
かといって、お出かけを強行して新型コロナの感染源となってしまうわけにはいかない。何か良い方法はないだろうか。そんな中、私の考えたことは以下のことである。
(1) 参加者全員が新型コロナに感染していない保証を取る。
(2) 参加者以外には接触しない、触れ合わないお出かけにする。
(3) 当然だが、マスク・アルコール消毒・至近距離での飲食なしを徹底する。
これならば、普段の買い物に比べてもリスクが低く、また、訪問先の方にも迷惑をかけないであろう。では、これを実現するにはどのような方法があるだろうか。
(1)については、唾液で測ることのできる抗原検査キットが1個2,000円くらいで販売されている。これを使おう。
(2)については難しい。宿泊の旅行になった時点でこれは成立しない。どうしても触れ合ってしまう。仕方がないから日帰り旅行だ。そして目的地は「外」だ。また、交通手段も貸し切りたい。それならば、参加者以外(乗務員は別だが。。。)に接触することはない。
(3)については、お店で食事しないが重要になってくる。残念だけれども。
こうして、私たちの異業種交流会、はじめての「ハイキング企画」を実施することとなった。コロナ感染拡大防止のためのポイントは以下のとおりである。
・行先は尾瀬!水芭蕉の群生を見に行こう!
・交通手段はバスを貸切!参加者以外とは一緒になりません。
・参加者には抗原検査を実施します。バスの運転手にも検査してもらいます。
・お店での食事はしません。その代わり、外で美味しいお弁当を距離をとって食べましょう。
何と、いつもより多い25名が参加してくれた。やはり、みな機会があれば外出したいのだ。
2.マイクロバスで行く尾瀬への往路
今回、私たちが選択した交通手段は、あえての「貸切マイクロバス」である。
尾瀬は言わずと知れた自然の宝庫で、四季折々の高山植物が私たちを楽しませてくれる。また、ツキノワグマやオコジョをはじめ、カエルやイモリまで生息。湿原を取り巻く多種多様な野生動物が、尾瀬の大切な生態系を形成している。
その豊かな自然を守るため、尾瀬ヶ原や至仏山の群馬県側の登山口となる鳩待峠(はとまちとうげ)は、5月中旬から10月上旬にかけてマイカー規制が実施されており、マイカーで行くことはできない。
また、道が狭いため大型バスで行くこともできない。そのため、私たちはマイクロバスをチョイスしたのである。
朝7時、新宿駅付近の集合場所にメンバーが集合した。全員抗原検査の結果は陰性だった。また、バス会社にも事前に検査キットを送っており、担当の運転手にも検査してもらった。なんともありがたい。これで安心して出発できる。天気は曇り空。何とか持ちそうだ。
バスは中野長者橋インターから首都高へ。外環道を経由して関越道へ。マイクロバスであることから乗り心地を心配していたが、案外悪くない。何と言っても「限られたメンバーだけで」「貸切で」「直行できる」というのがコロナ禍においてありがたい。運転手曰く、「外気導入で運転しているので、5分でバス車内の空気は入れ替わります」とのことであった。余計にありがたい。
バスは一路尾瀬へ。その途中で1つ寄った場所がある。「尾瀬市場・利根町本店」の中で販売されている泙川(ひらかわ)食品の「まいたけ弁当」の積込である。せっかくのお出かけなのだから美味しいものが食べたい、でもお店で食べるのは厳しい、ということで考えたのが【名物のお弁当を外で食べる】ことで、この地元産のまいたけ・地元産蒟蒻玉の手作りコンニャクを使ったお弁当はうってつけだった。よく見るとコンニャクの他、鶏肉・うずらの卵が良い具合に入っている。食べるのが楽しみである。
尾瀬ヶ原ハイキングコースの出発点となる鳩待峠へは、マイカー規制中。電車・大型バス・マイカーで来ていたら、途中の戸倉で専用の乗合バスか乗合タクシーに乗りあえる必要があった。貸切のマイクロバスなら見事にスルー。快適そのものであった。
3.尾瀬ハイキングの魅力
さて、いよいよ入山スタート!
今回の尾瀬ヶ原日帰りハイキングコースは、鳩待峠~山ノ鼻~牛首分岐~ヨッピ吊り橋~竜宮~牛首分岐~山ノ鼻~鳩待峠を歩く全長約17km、約6時間の行程。
このハイキングコースのポイントは、出発地の鳩待峠が本コースの標高のピークであること。つまり、次のポイントの山ノ鼻までひたすらなだらかに下っていき、帰り道が上りになるという按配。最初こそ岩場もあるが、ルートのほとんどは木道や階段が整備され、思ったほどアップダウンも少なく、非常に歩きやすい。
私たちの訪れた5月下旬はまだ残雪が多く、木道に雪が覆いかぶさっている状態も少なくなかった。トレッキングシューズを指定しておいてよかった、と変にほっとした。
山ノ鼻まであと1kmといったあたりで水芭蕉の群生地に対面した。しかし、ここで驚いていたのでは早かった。あとでもっと素晴らしい水芭蕉の群生を見るのだ。
山ノ鼻に到着すると、まず目に飛び込んでくるのは尾瀬山の鼻ビジターセンター。ビジターセンターのお隣は至仏休憩所。そして至仏休憩所に隣接する研究見本園。
「見本園」といっても人工的なものではなく、さまざまな湿原の様子が、まるで見本市のように凝縮していることからこの名がついたらしい。大回りの一周は30分ほど、小回りのコースは20分ほどのコンパクトな散策エリアで、至仏山をバックに美しい湿原の姿が広がっている。実にフォトジェニック!私たちはここで、先ほどの「まいたけ弁当」を、ディスタンスを取ったうえで賞味した。参加者がみな満足する味であった。
さぁ、いよいよここから本格的な尾瀬ヶ原の湿原散策がはじまる。湿原に点在する大小様々な池。「池塘(ちとう)」と呼ばれ、尾瀬ヶ原には約1,800も存在するらしい。水鏡のように空を映し出し、実に美しい。ほぼまっすぐな木道を40分ほど歩くと、牛首分岐に到着。ここから尾瀬ヶ原唯一の吊り橋である、ヨッピ吊り橋を目指す。
50分ほどでヨッピ吊り橋に到着。それほど大きくない吊り橋は、全長約25m、鋼鉄製で定員10名まで耐えれるそう。次は、竜宮の十字路・牛首分岐を目指す。
こうして進んでいくと、尾瀬のポスターでよく使われる絶景ポイントが見えてくる。おびただしい数の水芭蕉の群生地が見えてくるのですぐわかった。ここは外せない。コロナ禍以降、はじめての集合写真をここで撮影した。
さて、ここからは来た道をひたすら戻る。帰りは至仏山を正面に歩くので、行きとは違った景色が楽しめてそれはそれで素晴らしい。しかし、出発からすでに5時間近く経過。しかも行きは比較的楽な下りだった分、帰りは一転、登るのみ!
とはいっても、実際にはなだらかな傾斜が続き、想像していたほどきつくはなかった。そして、鳩待峠に到着。一日頑張ったご褒美に、山小屋おすすめの「水芭蕉吟醸ソフトクリーム」を皆で食す。群馬県川場村の蔵元が作った吟醸酒で風味付けしたこのソフトクリーム、日本酒の香りがフワッと鼻に抜け、舌触りなめらかでスッキリした甘さで癒やされた。
こうして、私たちの日帰り旅行は大成功に終わった。終了後に新型コロナに感染したという話も聞かなかった。
帰りのマイクロバスでは皆が眠りについていたが、その時の表情を私は忘れることはないと思う。