◆車椅子バスケットボールを普及させたい
私たちは、車椅子バスケットボールの普及に取り組んでいます。
車椅子バスケットボールとはどのようなものかというと、
障害者が車椅子で行うバスケットボールで、
障害者スポーツでも花形のスポーツです。
2020年に行われる東京パラリンピックの正式種目でもあり、
パラリンピックでは1960年のローマパラリンピックから
競技が行われている歴史のある競技です。
選手が車椅子に乗り競技する以外は
一般のバスケットボールとほぼ同じルールで行われます。
コートの広さ、バスケットの高さ、試合時間、フリースローで1得点、
フィールドゴールは2得点または3得点であるなども同じで、
初めて見る人でも見やすいのではないかと思います。
唯一異なる点は、ダブルドリブルに相当するルールがなく、
1回のドリブルに付き、2回以内のタイヤ操作が許されていることです。
3回以上タイヤをこぐと、トラベリングとなり、
この点は一般のバスケットボールに近いかもしれません。
車椅子を使ってぶつかりあうことから、接触や転倒もしばしばおきる激しい競技です。
また、片輪を浮かすティルティングやピック&ロールによる
華麗なプレーなど通常のバスケットボールとは違った面白さもある奥の深い競技です。
そして、上半身で車椅子を動かし、ボールも操るため、
選手の上半身は筋肉ムキムキで、女性のファンも多い競技です。
そんな車椅子バスケットボールキャンプの普及を
目指した活動を私たちの団体は行っています。
この事業を通じて、
「障害者であっても自分の可能性を夢見て、障害が選択肢を狭めることのない、
自己選択と自己決定ができる社会環境づくり」に
貢献したいと考えて活動を行っています。
◆車椅子バスケキャンプと大型リフトバス
そんな車椅子バスケットボールを普及させ、
プレイヤーの裾野を広げるために私たちが
取り組んでいる取り組みが「車椅子バスケキャンプ」です。
このキャンプでは、まずバスケ用車椅子の操作、
ボールハンドリング、シュート、パスといった基礎技術を学び、
1対1から3対3までの基礎戦術を学びます。
さらに、基礎技術を実践で発揮できるように、
それぞれのセッションの最後には試合を行い、
多くの人に楽しんでもらっています。
車椅子利用者だけではなく、健常者にも車椅子に乗って体験してもらっています。
今年も、夏休みに合わせて7月末に車椅子キャンプを実施することにしました。
毎年夏休みは運動部などの合宿が多く行われる期間。
いつもお世話になっている会場に今年は断られ、
会場探しは難航しました。
やっと会場が見つかったのですが、その会場には「交通手段がない」という課題がありました。
写真のように、車椅子利用者がバスケ用車椅子などの
荷物を持って長距離を移動するのは非常に大変なことです。
そのため、空港や駅から安全に移動する手段は何かないだろうかと
考えなければならないことになったのです。
そんな中、車椅子バスケ歴5年のベテランの方から提案がありました。
「私たちの施設の旅行で、リフト付きの大型バスを使ったことがある。
それを使うことはできないか。」
調べてみるとなるほど、
バス会社には車イスをそのまま載せることのできるリフト付きバスがあって、
6台まで車椅子が固定できるそうです。
そのうえ大きなトランクもあるため、車椅子単独での積込もできそうです。
これなら福祉タクシーと違って1台借りるだけでよく、
料金を聞いてみても福祉タクシーを複数台借りるよりも安かったため、
リフト付きバスを手配することにしました。
◆大型リフトバスによる選手輸送は素晴らしいリフト補助員つき♪
車椅子バスケキャンプは千葉県で行われました。
手配したリフトバスにお願いしたのはキャンプ開始前の
「成田空港からの輸送」「千葉駅からの輸送」と、
キャンプ初日終了後の「京成ホテルミラマーレへの輸送」、
キャンプ全日程終了後の「千葉駅への輸送」、
「成田空港への輸送」と多岐にわたりました。
会場が駅から離れていたため、
これだけ多岐にわたるリクエストとなりました。
対応してくれたバス会社に感謝します。
リフトバスの利用には思わぬ副産物がありました。
それは「車内でDVDがみられる」ことです。
車椅子バスケを今回初めて経験する方も多く、
バスの車内でルールや魅力を説明する映像を見てもらいました。
これによって、キャンプに来る前から期待が高まったのではないかと思います。
また、事前に期待していたとおり、
持ち込みの車椅子も大型バスのトランクにしっかりと積み込むことができました。
そして事前に期待していなかったうれしいことが。
それがリフト補助員さんの存在です。
大型リフトバスは機械で車椅子の昇降を行うため、
運転士だけでなくリフト補助員という専属の方がつきます。
この方がまた素晴らしく、なんと以前勤めていた福祉施設には
車椅子バスケをやっていた方がいらっしゃったそう。
なので、私たちが説明するまでもなく車椅子バスケの魅力について
車内のマイクで語ってくれて、
またリフト操作やバスでの車椅子の固定も堅実で、
安心して任せることができました。
これも、福祉タクシーの借り上げでは得られなかったポイントです。
◆京成ホテルミラマーレのバリアフリー
選手の輸送は大型リフトバスにお願いしました。
そして、選手の宿泊は「京成ホテルミラマーレ」さんにお願いしました。
このホテルは、過去に「バリアフリー化推進功労者表彰」において、
表彰最高位である内閣総理大臣賞を受賞した、
バリアフリーに力を入れているホテルで、
ホテル内は高齢者や車椅子も動きやすいフラットな床、
毛足が短い絨毯を使用しており、
エレベータすべて車椅子が入れる大きさ(開口100cm・幅188cm・奥行160cm)で、
全館バリアフリー化を実現しています。
よくある、「1つのエレベータだけ車いす対応」といった形のホテルでは、今回のキャンプのように大勢の車椅子利用がある時には非常に時間がかかるので、こうして全てのエレベーターが使用できたのは非常に助かりました。
また、ハード面だけではなく、ソフト面でもバリアフリーなホテルで、この点もさすが盲導犬ユーザの団体、特別支援学校、ウィルチェアーラグビーの選手など、様々な方を受け入れてるホテルだけあるなぁと感心しました。
安心して宿泊をお任せすることができました。
◆キャンプの成功とパラリンピックへ向けて
こうして、リフトバスとホテルにも支えられてキャンプは
成功裏に終えることができました。
参加者からは「分かり切っていなかった知識や
自分の考えるスキルを整理するとてもいい機会になりました。
何より、とても楽しかった!」
「初めてのキャンプで汗だくの酷暑の中でしたが、
辛いと思った時は一瞬たりともありませんでした。
こんなに楽しく学べるスポーツは初めて!!」という感想をもらい、
主催者冥利につきます。
そして、2020年には東京でパラリンピックが開かれます。
この車椅子バスケの裾野を広げるためにまたとない機会だと思っていますので、
それに向けてまたキャンプを開いていくなど、積極的に活動していきたいと考えています。
また、パラリンピックでは今回の規模とは比較にならないくらいの
選手輸送が必要となります。
その時には、リフト付きの大型バスを持つ会社が増えたり、
京成ホテルミラマーレのようなホテルが増えたりしていくのも
重要なことだと考えています。
そのためにも、私たちはキャンプを通じて
リフトバスとバリアフリーなホテルを使い続けていきたいと思います。