◆近場へのお散歩、でも施設の車でのピストンはしんどい

2016年から老人保健施設で勤め始め、今年で3年目となりました。仕事も身に付き、「何か新しいことをやってみたいな」と思っていたところ、施設長から「今度のお散歩旅行の幹事をしてみないか」というお言葉。お散歩旅行は皆さん楽しみにされているイベントでして、私自身も気合を入れて、楽しいイベントにしたいと張り切っていました。
私自身、お散歩旅行にはスタッフとして過去6回参加しています。そのたびに思うのが「施設の持つワゴン車で車イスの方を3回もピストン輸送するのは、時間のロスが大きいよなぁ」ということ。
当施設の入所者は現在20名で、うち10名の方が車イスを使用し、7名の方は少しの距離なら歩くことができます。
今までのお散歩旅行では、施設の持つ3台のワゴン車(うち1台は車いすを固定可能)で入所者の方をピストン輸送していたので、行ける場所は本当に近場の公園なんかに限られていました。そのロスを何とかして、もう少し遠くまで足を延ばして目先の変わったお散歩旅行にしたいなぁ、と思ったのです。

◆大型リフトバスとの出会い

以前から、車イスを丸ごとリフトでバスに乗せることができるリフト付きバスの存在は知っていました。ただ、私たちのような近場の旅行でも使うことができるかどうか不安があり、意を決してバス会社に問い合わせをしてみました。
そしたら何と、近場の旅行でも利用OKとのこと。ただし当然費用がかかるので、見積を出してもらいました。全部で10万円を切る金額だったので、施設長に掛け合いました。出た答えはゴーサイン。入所者の方には全員バスに乗ってもらい、車イスから降りられない3名の方はバス車内で車イスを固定、7名の方は車イスを降りてバスに乗ってもらい、車イスは施設のワゴン車で輸送することになりました。これでスタッフも一緒にバスに乗り込むことができます。
行程に余裕ができ、「太陽の塔の内部公開」で盛り上がる、万博記念公園へのお散歩旅行を実施できる運びとなりました。

◆大型リフトバスは、少しだけ歩ける方にとってバリアフリー

晴れ渡ったお散歩旅行当日、リフト付きの大型バスが施設の前にやってきました。入所者の皆さんも初めて見るリフトバスを興味津々で眺めています。
まずは車イスを降りることのできる方から乗車です。私は最初、大型バスのステップを果たして上れるのか不安だったのですが、なんとリフト機能を使って車イスごと車内に入ってもらい、そこで車イスを降りて座席に歩いて行ってもらうようリフト補助の方から誘導されました。これならステップを上る必要がありません。ザ・バリアフリーです。
その後、車イス5台を固定しました。最後にご自分で歩ける方が乗車されて出発です。いつものワゴン車とは違う環境で、施設長からマイクでのあいさつもありました。私もマイクを持ち、今日訪れる「万博記念公園とエキスポシティ観覧車」の説明を皆さんにさせていただきました。

◆万博記念公園のバリアフリー

さて、万博記念公園に到着です。今日はここで太陽の塔を見て、お花見をするのが最初の目的です。
万博記念公園内のバリアフリーについては、「らくらくお散歩マップ」という強い味方があります。これは何と「傾斜0~4%(難なく行ける)」「傾斜4~8%(少ししんどい)」「傾斜8%以上(困難)」と3段階に道が種類分けされており、広い園内を迷わず、最適なルートで移動するための強い味方になります。
私も、このガイドブックとにらめっこで通る道を選びましたので、とても便利に園内をまわることができました。
最初に見えてくるのが万博記念公園のシンボルの太陽の塔。何といってもあの独創的なフォルムで高さ70メートルある塔。近くで見るとその迫力に圧倒され、入所者の方もはしゃいでいます。皆さん、1970年の万博には来たことがあり、思い入れがあるのですね。
見上げても、見下ろしても圧巻。まるで進化した生き物に出会ったような印象です。重厚な存在感と圧倒的オーラがあります。

太陽の塔は現在、内部の耐震補強工事が終了し、48年ぶりの一般公開が始まっています。内部を見るのは完全予約制で、30分の入替制となっているため今回のお散歩ではパスしましたが、下調べしたところによると、内部を階段で上ってゆくルートの他に予約制で使うことのできるエレベーターがあり、1階〜中層階〜最上階の各フロアから観覧することができるそうです。中では、未来を表す「黄金の顔」、現在を表す正面の「太陽の顔」、過去を表す背面の「黒い太陽」に続く第4の顔「地底の太陽」が展示されており、単細胞から人類への進化をたどる生物模型が多数展示されている高さ41メートルの「生命の樹」も見ることができるようです。いつか行ってみたいと思います。

万博記念公園ではポピーが咲き乱れていました。すごく手入れの行き届いた公園ですので、歩いてきて気持ちがいいですし、花を見て入所者の方も癒されていたようでした。公園で2時間ほどを過ごし、次の目的地であるエキスポシティへ移動します。

◆エキスポシティでのランチと散策

「EXPOCITY(エキスポシティ)」は、2015年11月19日に万博記念公園駅の近くに開業した、日本最大級の大型複合施設です。大型のショッピングモールのららぽーと、ミュージアム、観覧車など、全部で11の施設からできています。敷地面積は広大ですので、1日で全部回るのはほぼ不可能。今回はランチと観覧車に的を絞っていくことにしました。

普通、車イスと一緒だと入れるお店が限定されるのですが、ここエキスポシティは新しい施設でもあり全面的にバリアフリー。フードコートは少し厳しいですが、ほとんどのお店で車イスと一緒に入店することができます。なので、皆で一緒に食事をするのではなく、何グループかに分かれてそれぞれの好きなお店でランチをすることにしました。これが結構好評だったんですよ。

そして、その後は観覧車へ。そう、エキスポシティの観覧車は車イスで乗ることができるのです♪
日本一の高さ123メートルを誇る観覧車「REDHORSE OSAKA WHEEL(レッドホースオオサカホイール)」は、チケットが大人1名1,000円と高額なのですが、障害者手帳を提示すれば、当事者と付添人1名まで500円で乗ることができます。750mm以下のサイズであれば車イスで乗る事もできるので、非日常の体験として非常におすすめです。
チケット売り場から乗り場(2階)へと向かうルートはゆるやかなスロープ。屋根付き。スロープを登りきると乗り場に到着します。ゴンドラに乗るためには、段差が1段だけあるんですが、車椅子で乗る場合は、観覧車を一旦停止してスロープを設置した上で乗り込むことができます。スタッフさんも手慣れた様子で安心でした。もちろん、車イスを預けて自力で乗り込むこともできます。
一周は約18分間。先ほど見上げた「太陽の塔」を今度は見下ろす格好となり、一緒に乗った入所者の方も「見下ろしたのは初めてだ」とはしゃいでいました。そして360度、大阪中の景色が展望できます。今回は昼でしたが、夜景もきれいだろうなぁ。

◆お散歩旅行は大好評

という訳で、思い切って大型リフトバスをチャーターしたお散歩旅行は、大好評のうちに終えることができました。「次もバスで行きたい」という声を入所者、スタッフの両方から多く聞きました。
すでに、早速秋の旅行の計画にとりかかっています。秋はリフト付きバスの予約がすでに入っている日が多いらしく、バス会社にかけあって、仮押さえをもらいました。今は、秋にどこに行くか、真剣に考えている最中です。

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