◆今年の社員旅行はバリアフリー仕様♪
わが社は東京と京都に営業所を持つ総勢約70名の企業。
私はこの会社の人事担当者として、採用・勤務管理・福利厚生など様々な業務に携わっている。
東京に40名、京都に30名の社員が在籍しているわが社は、毎年秋の時期に社員同士の懇親を図り、
東京と京都の結束を図るために社員旅行を行っている。観光あり、温泉あり、夜の一発芸あり、
カラオケあり、、、と盛りだくさんで、
毎年これを楽しみにしている社員は多い。
例年は、「東京と京都の間の宿」「新幹線で各自が集合」という形をとっていたが、
今年は社長より以下のミッションがくだった。
『わが社に障害者雇用で来てくれている2人にも、社員旅行に参加してもらわないと。
社員旅行もバリアフリー、東京と京都の社員間もバリアフリーだ。頑張ってくれよ。』
さて困った。どうしよう。
わが社には、障害者雇用で東京に1人、京都に1人、車イスを利用している方がいる。
仕事、特にパソコンの能力は抜群で、チラシを作ってもらったらピカイチ、
請求書作ってもらってもミスなし、
私の担当する勤務管理も手伝ってもらっており安心して任せられる、わが社にとっての大戦力だ。
このお2人にも社員旅行に参加してもらいたい気持ちはもちろんある、でも手配をどうしよう。
新幹線で来てもらうなら案内役がいる。そして新幹線乗るまで、降りてからはどうしようか。
いつもは、新幹線の駅で合流して、バス2台に分乗して観光と宿に向かっていた。
必死でグーグル先生に尋ねる日々。いろいろ調べた。
そこで出てきたのが「リフト付きバス」だった。何と車イスごとバスに乗り込むことができるのだ。
これなら直行できて乗換の手間もない。
値段は、、、 新幹線よりずっと安い。
所要時間は、、、 東京と京都のちょうど真ん中で行えば、どちらも片道4時間。
新幹線の駅まで行って乗り換えるのと大して変わらない。
社長に提案してみた。結果はGO!
かくして今回の社員旅行は「大型リフトバスを使ってみんなで行く、浜名湖温泉(東京と京都のほぼ中間)への旅」となった。
「完全バリアフリーの社員旅行」わが社も時代にあわせて進化していく。
◆大型リフトバスは気づかいいらず、そして盛り上がる
某月某日
天気は晴れ。午前10時、東京営業所も京都営業所もこの時刻にバスは出発する。
大型リフトバスが会社駐車場に入ってきた。ピカピカだ。
車イスのAさんも心なしか顔がほころんでいるように見える。
会社からバスで直行することにしたことにより、
バリアフリーになったことの他にもメリットがあった。
1つは多くの荷物が載せられるということ。新幹線で移動する場合に比べて、
会社から荷物が持っていきやすいので、
「宴会で使う着ぐるみ」とか「みんなで飲むビールやお茶」など気兼ねなく積むことができた。
これはありがたかった。営業所に車を置いてそのままバスに乗車できるので、他の社員にも好評だった。
もう1つは、車内空間が自由になるということ。
新幹線と違ってバスの中をレクリエーションの空間とすることができるため、
みんなで楽しむことができた。わが社は昨年創業40周年を迎え、
それを記念して社史ビデオを作成したのだが、
社員には配りっぱなしになっていた。
それを今回のバス車内で上映することができたので、
皆がわが社に対する愛着を深めてもらう機会につながった。
これだけでも社員旅行の意味があるというものだ。
また、これはおまけだが、京都営業所のバスが途中に立ち寄った、
刈谷ハイウェイオアシスの「えびせんべいの里」。
ここはえびせんべいの試食がし放題で、
車内でビールを召したほろ酔いの社員に好評だった。
そんなこんなで、当初は気にしていた「4時間のバス旅」は、時間の経つのがあっというまであった。
当然のことだが、リフトバスのドライバーさんは安全運転に徹してくれて、
カーブもゆっくり曲がってくれたので、車酔いをした人は全くいなかった。
◆バリアフリーの充実した「かんぽの宿・浜名湖三ケ日」
15時には、東京からのバスも京都からのバスも「かんぽの宿・浜名湖三ケ日」に到着した。
まずは元気なうちに全員で記念撮影。
いや、ほろ酔いを通り過ぎで元気でなくなっている人も。。。
宿で各自チェックインしたら、まずはわが社の社員旅行恒例の【全体会議】を実施する。
いつもは和室の大広間で実施しているのだが、今回は会議室で。
洋間なので車イスもそのまま入ることができるバリアフリーである。
【全体会議】の内容はというと、、、
・・・ まさに「演説」と呼ぶのがふさわしい60分にもわたる社長の話。
わが社創業の話からはじまり、倒産しそうになった話、
そこから得た「お客様のためには手を抜かない、気を抜かない」という社訓の話。。。
こうやって書くとつまらなそうに見えるが、なんといってもわが社の社長は話術がすごい。
ジャパネットの前社長も顔負けのトーク力で社員をひきつけ、60分をあっという間に過ごさせていく。
②優秀社員の表彰
・・・ そしてこれも恒例となった「優秀社員の表彰」。
1年間、優秀だった社員を社員間の投票と社長の独断で決定し発表する。
今年の優秀社員は、なんと車イスのAさん!
ははー、社長がバリアフリー旅行にこだわったのはこれだったか。
この優秀社員の表彰では大いに盛り上がった。
【全体会議】は17時で終わり、そこから18時開始の宴会まではお風呂の時間となる。
ここで力を発揮したのは「かんぽの宿・浜名湖三ケ日」の客室。
客室は当然段差のないバリアフリー仕様で、
お2人が使うのに何不自由ないつくりになっている。
ここでは、私が現地でヘルパーさんを手配していて、車イス利用のお2人にも、
しっかりとお風呂につかってもらうことができた。
お2人にとっても楽しいひとときだったようだ。
◆大盛り上がりの宴会
そして、今回の社員旅行のメインイベント、全員参加の宴会が18時に始まった。
上品な味の料理に舌鼓を打つ、という余裕もなく、皆の歓談が始まる始まる。
最初からトップギアで盛り上がった。
そして、宴会は
・豪華賞品つきの「わが社クイズ」 → これも優秀社員賞を獲得したAさんが1位、
ダブルでのタイトル獲得となった
・各部対抗の出し物 → 今回はバスに着ぐるみが乗せられたので、各部非常に凝ったものになった。
・点数で競う「カラオケバトル」 → みな熱唱しすぎてひどい点数になったのは言うまでもない
と進んでいき、22時には終わったがその後も2次会、3次会と進み。。。
例年より盛り上がった気がします。
そして、やはり車イスの方も含めた全員参加となったので、
本当の意味での全社のバリアフリーが実現した気がします。
◆童心に帰る浜名湖パルパル
最後に、観光についても書いておかねば。
2日目は観光をすることにしているが、今年はその観光もバリアフリーを意識したものにし、
浜名湖の遊園地「浜名湖パルパル」に立ち寄ることにした。
普段の社員旅行では絶対に行かないようなところであるが、
前日の会議や宴会で一体感が強まった後に乗る観覧車というのはいいもので、
皆口々に「良かった」と言ってくれた。そして、この観覧車は車イスでも乗ることができるもので、
全員が等しく楽しむことができた。
◆今回の旅行の勝因
こうして、今回の社員旅行は皆に好評であった。
「次回もバスで行きたい」というのが大多数の社員の話で、
車イスのお2人も「来年も絶対参加する」と言ってくれた。
また、社長も「わが社はバリアフリー、バリアフリー」と旅行後、何回も唱えるなど上機嫌だ。
その勝因は「リフト付きバスでの旅行」をすることにしたこと。来年のバスもすでに予約済である。